さて次はどんな事が起こったかというと、
株に実がついて収穫を始める事ができました。
ミニトマトの実を確実に着ける為に「トマトトーン」というホルモン剤を吹き付けます。
のちに「トマトトーン」は使わなくなりました。
「トマトトーン」のメリットよりもデメリットの方が多く目についてきたからです。
「トマトトーン」を使うと確かに着果、肥大が良好のように感じたのですが
使わなくてもそこそこ着果、肥大をしたから。そして使った場合
花びらが実から離れずそこからカビが発生する場合が多い。
今回のミニトマトの作付に限ってだが実が着き過ぎて味が落ちる。
花が増えてくると吹き付ける手間が結構馬鹿にならない。などなど。
だから使用するのをやめた。
着果を始めて確認したのは4月29日。
さすがに感動した。食べてみようかと思ったけど我慢した。
数日後食べてみたけど。そしたら苦くて食えたもんではない。
実に色が付きだしたのは5月23日。
そして6月1日、初めて出荷できた。記念すべき9パックのミニトマト。
八月の終わりまでほぼ毎日出荷する事になる。
多い時は86パック。順調だった。
定植25日後、着果しました。
色付く果実。収穫までもう少し。
無事出荷できました。
順調に収穫、出荷していたが、すぐにまた問題が起きる。
味の問題だ。収穫しながらミニトマトを食べまくっていたのだが
株や実の出来る場所によって味が違う。サンチェリーについてはそれでも
おいしいと言われていたがアイコの方がイマイチだった。
品種的な問題かなとは思った。それはそういう風に言う人がいたから。
それでちょっとだけ安心したが中にはかなりおいしい実を着けている株もある。
サンチェリーもアイコも収穫段数が3段くらいになれば味はもっと良くなるだろうと
思っていたが一向に良くならなかった。
そんなとき周りの人に相談していたらある肥料メーカーを紹介してもらった。
藁をも掴む思いで電話をした。事情を話したら電話の向こうで
「おいしくなりますよ」
とごくあたりまえのように私に答えてくれた。
後日、その肥料メーカーの営業が私の畑まで来てくれた。
いろいろ話をしてお目当ての使えば食味が向上する
魔法のような肥料の使い方をこと細かに聞いて、その場で買ってしまった。
カツオエキス入り肥料、八千円也。
翌日、早速ミニトマトに葉面散布した。
肥料メーカーの営業の人が言うにはだいだい10日くらい毎に
葉面散布するとミニトマトの味が良くなるとの事。
本当は育苗している時から使うと病気にも強くおいしい実を着ける株になるとの事なのだが
今回はしょうがない。翌日ミニトマトの様子を見たらちょっと様子がおかしい。
肥料の色が果実に付着していた。いやな予感がしつつ食べてみたら
肥料の味が果実に付いていた。最悪。
この肥料は調味料か?と思った。それも生臭いカツオの出汁の味。
何これ?葉面散布したら当然こうなるよね。果実を避けて葉面散布なんてできないよ。
こんな事他の農家さんもやっているの?騙された。そう思った。
いや、もしかしたらこのカツオエキス肥料で効果を出している農家さんもあるかも
しれないので断言はできないが、私はこのこのカツオエキス肥料をその日以来
使ってません。今もあります。欲しい人いたら譲ります。先着一名です。
農業の世界にはこんな資材が多数あることを後に知りました。
その大多数は効果が疑問視されるようなものが多い事も。
このときの私はミニトマトの味の危機感で頭一杯になっていて冷静な判断を欠いていました。
8千円は授業料と思うしかありません・・
中には数100万もする植物に良い水を作る機械とかもあるとか。
農業に限らず仕事をしていれば切羽詰って目の前の解決方法を盲目的に信じてしまい
飛びついてしまう事があります。常に冷静な判断が出来るようになりたいです。
冷静な判断をする為には安定した経営状態とか仕事の適切な段取りとかがとっても重要ですね。
6月14日。今年も梅雨がきました。梅雨はとっても大切です。この時期にきちんと雨が降ってくれないと
確実に渇水が襲ってきます。ダムがたくさん作られて現在は水不足についてはそんなに深刻に心配しなく
なったような気がしますが、数年前に私が四国に住んでいた時は毎年夏場の水不足は深刻な問題でした。
しかし、農業にとってこの梅雨というものはありがたくも迷惑な時期なのです。
ご想像通り病気が非常に発生しやすい時期なのです。経験を積んだ百姓なら病気が発生する前に
農薬を予防散布して病気の発生を未然に防ぎますが、私にはそれができません。
ミニトマトに発生する病気は本で勉強して一通り知っているのですが
一通りの病気を予防する為に農薬を散布するのは抵抗があったので何もしていませんでした。
もちろん下葉を欠いて風通しをよくする等の予防はしていましたよ。
大丈夫かなーと不安な気持ちで毎日収穫していたがついに発見してしまった。
灰色カビ病だ。もしかしたら葉カビ病かもしれない。が、どちらも治療薬は同じなのでその区別は
あまり重要ではありません。アイコは葉カビ病に抵抗性があるので灰色カビ病だと思う。
この病気の予防はいかにハウス内の温度と湿度をコントロールするかが
重要です。ミニトマトの生育適温は夜温で10〜20度なので梅雨時期までは
夜間にビニールを閉めておき毎朝7時頃にビニールを開放して換気します。
さらに薬剤の予防散布と抵抗性がある品種を使っていれば完璧。のはず?
しかし、発病してしまったので早速、種屋さんに行ってオススメの薬剤を購入し、散布した。
ゲッター水和剤という農薬を使用した。薬剤散布後24時間経てば収穫再開しても良い
と説明書に書いてあったので翌日収穫再開。再開したのは良いが
よく見ると果実には水に溶かした薬剤の乾いた後の粉末が付いていた。
それをきれいに拭きながら収穫するので手間がかなりかかるようになってしまった。
やはり病気の予防の為の農薬散布は重要だと知った。実が着く前に散布しておけばこの手間は
発生しなかっただろう。これもまた重要な経験だ。そう思いながらミニトマトを試しに食べながら収穫を続けた。
薬剤メーカーの説明書に嘘がなければ食べても自分の体には何の異常も起きないはずだが
さすがに怖かった。作業終了後なんとなく舌が痺れて気分が悪くなったような気がする。
本当に何となくなので農薬が原因かどうかはわかりません。私の農薬に対する恐怖心が
そう感じさせたのだろうといまだに思い込むようにしています・・・
怖っ!
ゲッター水和剤散布後、様子を見ていたが効果の出方にバラツキがあった。
カビがどんどん広がっている部分や治ってうっすら緑色が回復している部分など。
重症のように見えた株にはカビの繁殖している付近の枝をちぎって
主枝だけになった部分にゲッター水和剤を吹き付けてフキンでゴシゴシ拭いた。
こうした部分は全個所カビは収まってきていた。
ここまでしたくなるほどカビの広がり方が早く全滅の危機を感じていたからです。
皆さんはマネしないで下さい。むやみに枝葉を取ってしまうという事は
株の力を無くす事になるのでやってはいけないと専門書に載っていました。
後で知りました・・
しかし、ラッキーな事に梅雨が明けたらカビの広がり方が遅くなってきた。
やはり湿度の影響は大きいなと実感した。
この後もカビの発生がわずかにあったが発生当初のような猛烈な勢いは無く
農薬も使用しませんでした。あまり問題なかったと思います。
その他の病気ではウドンコ病がでましたが万延するほどの勢いは無かったので放置しました。
放置という判断も適当なように聞こえるけど、本やらネットやら知人のアドバイスやらを
総合した結果の判断です。就農一年生にとっては「何もしない」という選択肢は
結構勇気がいるものです。
病気の後は害虫がやって来た。最近果実に薄黒いシミのようなものを見かけるなーと
思っていたのだが、原因がよく判らずに困っていた。そんなときミニトマトに触ったその時に
白い粉粒のようなものが一粒ス〜っと舞い上がった。なんだっ!?と思ってもう一回ミニトマトの株を
ゆすってみたらまた2〜3粒の白い粉粒のようなものがフラフラっと舞い上がった。
今度はサッと手を伸ばしとっさにつかんだ。見事手の中に収まったその白い粉粒は虫だった。
オンシツコナジラミだ。ミニトマトに付く害虫は一通り覚えていたのですぐわかった。
ただ、この害虫がミニトマトにどのような被害を出すかは頭に入っていなかったのでその晩すぐに調べた。
どうやら数日前からの果実にづいていた薄黒いシミの原因はこのオンシツコナジラミらしいという事がわかった。
幼虫の排泄物?これが果実に付いてそこにカビが発生する。スス病というらしいが、これが薄黒いシミの原因だった。
このスス病は灰色カビ病みたいに株を枯らすほどの被害は出ないのだが、果実に発生すると商品価値がなくなる。
食べる気がしない。発生初期はホントによく見ないとわからない位薄く、小さい点のような症状ばかりだったが
オンシツカナジラミがあっという間に激増して収穫している時に鼻の穴に飛び込んでくるようになる頃には
たくさん着いていた果実のほとんどにこのスス病が見られ、墨汁を薄めてぶっかけたような状況になってしまった。
手に負えない・・。しかし、こんな悲惨な状況になってしまったのは2種類のミニトマトのうち「アイコ」の方だけで
「サンチェリー」の方はほとんどスス病が見られなかった。耐病性についてスス病の事はどちらも書いてなかったのだけど
この差は極端だな。しかも「サンチェリー」の方はスス病の部分をこすると落ちた!なのでほとんど被害なし。
因みにオンシツコナジラミの寄生状況は2種類とも同じくらいだった。
こんな被害をもたらしたオンシツコナジラミに対する私のとった対策は黄色い粘着テープを設置する事だった。
これは失敗した。確かに黄色い粘着テープを設置すると、フラフラっとオンシツコナジラミが寄って来て
ピタっとくっつく。笑ってしまったよ。簡単に捕獲出来るので個体数を減らせると思ったのだが
2m間隔で設置したくらいじゃ全く効果なかった。後に判ったがこれはオンシツコナジラミの発生をいち早く
知るために使い、発生したらすぐに農薬散布をする事が大切だったらしい。うーむ・・。
私がミニトマトを作る際に穴があくほど読んだ本です。
トマト、ミニトマト、ミディトマトクッキングトマト、ナス、米ナス、一口ナス、ピーマン、カラーピーマン、シシトウ、トウガラシ、スイートコーン、エダマメ、サヤインゲン、ソラマメ、サヤエンドウ、スナップエンドウ、グリーンピース、の播種、育苗方法、定植、定植後の管理、肥培管理、病害虫の予防、防除方法、作物の基本的情報(原産地、生育条件等)、経営指標(経費、利益など)が網羅されており相当レベルの高い内容になっていると思うが初心者にはややわかりずらい部分もあるかも知れない。
ミニトマトにチャレンジ
ミニトマトを栽培する事にした。「アイコ」と「サンチェリー」の2種類に決めた。
種から育てると時間がかかるという事なので苗を購入する事にした。
ということで早速行き付けの種屋さんに苗の発注をした。
最初に158株。次に200株。そして20株。それぞれ別々の日に連絡なしで到着し、作業予定が大幅に狂う。
全てが初体験なのであわてた。まだ定植準備が出来ていなかったから。
急いで種屋さんに肥料とマルチ、灌水チューブを用意してもらった。
種屋さんはなんでそんなに私があわてているかわからない。
私はなんで種屋さんが落ち着いているかわからない。
最初に届いた苗はアース苗と言ってポットに入っていない苗だった。
だから、翌日には枯れかけていた。
苗の管理方法なんて届いた苗の箱に入っていた説明書には書いてなかったし
その枯れかけた苗はぐにゃりと頭をもたげていて、
驚異的に体の柔らかい人が前屈した様な姿のようだった。
死にかけてる苗たち・・・
私はこの作物に生活を委ねなければならない。枯らす訳にはいかなかった。
育苗用のポットを買ってきて移し替えた。移し替えるのも一苦労。なんせグニャリと前屈しているから
どうしても葉っぱに土がベタベタつく。後にその部分は枯れていった。それくらい酷いダメージを苗に与えつつ
ようやくポットに移植完了。灌水して帰宅。翌日、苗は腰が伸びて若返った感じになったが
まだほとんどの苗の葉っぱはぐったりしていた。さらに翌日。ほとんどの苗はシャキッと元気になりました。
さらに翌日アブラムシ予防の為にベストガードという粒剤タイプの農薬を使用しながら定植完了。
あーしんど。
定植して元気になりました。
でも、こんな事は後におこる様々な事と比べれば全然大したことなかった。
トマトは強いから多少の事では死なないらしい。種屋さんはその事を知って慌てなかったらしい。でも私は知らん!!
ミニトマトはすくすく育っていった。と思ったのもつかの間、サンチェリーの方が元気が良すぎる。
窒素過多だ。葉は大きくなってトマト本来の葉形よりも丸味を帯びた形になってしまった。
こうなってしまったらどうしようもない。肥料が切れるまでほっとくしかない。
ものの本によると腋芽を摘まないでおくと生育が落ち着くそうだ。
まあ、元気が無いよりはましかなって思いそのまま様子を見ていくことにした。
窒素過多で丸っこくなってしまった葉っぱ。画像左側の新葉の葉形と比べると一目瞭然。
葉先は先のドタバタで枯れかけている。
初めのドタバタがうそのように順調に生育している。ハウスの中に入ると
ツンとトマトの爽やかな香りがほんのり漂う。しかし、私は悩んでいた。
そろそろミニトマト達を誘引してあげないといけない位の大きさになりつつあったからだ。
お金さえあればたいした事では無い。園芸用の支柱を買って来て
畑に挿してミニトマトを結んであげれば良いのだから。
でもその支柱が一本120円位する。竹なら一本40円。
掛ける事の360株分は43200円也。竹ならその3分の1。
他にまだ安く上げる方法はある。ひもで誘引する方法である。
これだと2000円位で済む。ちなみにハウスの広さは約2.5畝。選択の余地なし。ひもでの誘引に決定した。
ん?悩んでないじゃないかって?悩んでました。ひもでの誘引に、いや〜な予感がしてたから。
そしてその後いや〜な予感が現実になりました。
誘引用のひもを設置した所。いやな予感はこの後に的中。収穫終了までずっと襲いかかって来た。
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